丹生川上神社 下社→宮の平遺跡(上社旧社地)・森と水の源流館・上社→中社→近鉄榛原駅
丹生川上神社は天平宝字七年(763)の初見から応仁の乱の頃まで祈雨止雨の神として書物にしばしば見える。祈雨には黒馬、止雨には白馬を奉納した。 その後忘れ去られたが、江戸時代になって国学の普及で探索が行われ、丹生川畔の下市町長谷(ながたに)の現下社が丹生川上神社に比定された。 明治になって、この神社の江藤宮司自ら『類従三代格』の神域の四至と実際の地理が合わないと主張して四至の合う吉野川畔の川上村迫(さこ)の現上社を候補とし、二社で祭祀を行い政府が追認した。 大正になって今度は春日大社森口宮司が、出身地の高見川畔の東吉野村小(おむら)の蟻通神社(現中社)の平安時代の祭神像、鎌倉時代の灯籠銘と春日社文書、『大和志』、『丹生神宮造営棟上文』の記述、神域の四至の合致を根拠に蟻通神社が丹生川上神社と主張し、現在三社が仲良く丹生川上神社となっている。 時折強い雨が降るあいにくの天気。今日は緑あふれる吉野川流域、丹生川上神社三社をバスで巡り『続日本紀』『日本後紀』などに祭祀記事がある丹生川上神社を探す。 | |
丹生川上神社 下社 | |
![]() | 下市口から南下して下社へ。 社殿は天誅組に焼かれ明治18年に改築された。 |
![]() | 特に本殿と拝殿をつなぐ屋根付の長い木の階段が印象的。背後にあるという磐座は確認できないという。 |
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![]() | 黒白の神馬が飼われている。 皆見宮司のご厚意で記念写真を撮る。 |
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丹生川上神社 上社 | |
上社へ。河畔の社殿は大滝ダム建設で水没し、中腹に新築遷座。旧社殿は飛鳥坐神社に移築。 | |
![]() | 浮御堂の下に沈む旧社地は橋本先生が発掘された宮の平遺跡。「森と水の源流館」には、出土した、縄文早期(約一万年前)の土器片や、中後期の、近畿では例がない立石を伴う環状配石祭祀遺構が展示されている。『丹生』を意味する辰砂精製石器も見つかっているが、このあたりでは辰砂は採れない。宇陀から運んだか、どこかに知られざる鉱脈があるのか。縄文晩期以降、遺構・遺物が見られなくなるが、八世紀中葉から九世紀初頭に集石祭祀遺構が作られる。十一世紀末から十二世紀初頭に敷石遺構が作られ、十三世紀になってようやく敷石に土を盛り社殿が造られる。 写真左上 土ごと切り出され展示されている 環状配石祭祀遺構 写真左下 出土土器、石器 写真下 源流と森のシアター |
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![]() | 本殿と拝殿を結ぶ線上に清水、磐座、神奈備山が並ぶ古式な信仰形態をとるというが、残念ながら磐座は確認できない。古代から祭祀が継続した宮の平遺跡が丹生川上神社というのが橋本先生の考え。 写真上 正面右、雲かかる頂が甘南備山 写真下 浮御堂と水面近くが磐座? |
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拝殿横に移設されている旧社地の敷石遺構は、写真をもとに宮司自ら発掘時の石を並べられたそうだ。 | |
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神社建築では礎石の上に井桁を組み、その上に建物を据えるが、拝殿に並ぶ旧社地の礎石に残る四角い赤い顔料は礎石の上に直接柱が立てられていたことを示す 写真左四角い朱の跡 写真右円い柱の跡。 | |
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宮司の説明を聞く | 昨年の11月例会 「藤原道長大峰参詣道を歩く」で天皇陛下の車列と遭遇。第34回全国豊かな海づくり大会~やまと~】がここ大滝ダムで開催され、鮎の放流が行われた。 これはその放流台。 |
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丹生川上神社 中社 | |
![]() | 社殿は天保元年(1830)完成。橋本先生の考えでは、15世紀になって、ここを本拠として宇陀郡内での領地争いをしていた国人の小川氏が、自身の権威付けのため上社から丹生川上神を勧請して丹生川上神社神主と名乗り、上社をまねて社殿を建立した。 上社で見た礎石と同じように中社本殿柱が礎石の上に直接立つのを順に確認する。 |
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摂社丹生神社 | |
![]() | 『棟上文』にある「丹生神宮」は工期の短さから対岸の春日造の摂社丹生神社ではないかという。 |
![]() | 丹生神社社殿背面の剥離の激しい龍の絵を確認。 中央左上が目。 |
![]() | 『日本書紀』神武天皇即位前戊午年甲子条に「丹生川上に陟りて、用て天神地祇を祭る」と記され、これが「丹生川上」の初見で とある。 丹生神社向かいにその顕彰碑がある。 |
![]() | 吊り橋をゆらし、神域の北限「猪鼻瀧」に比定された東の滝を見る。 赤い橋の奥。 |
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下社で白馬に止雨を祈ったおかげか、晴れ男の橋本先生のおかげか、雨に打たれずにすんだ。 一日で三社を廻る充実した一日を企画いただいた橋本先生に感謝。 |