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JR長柄駅→星塚古墳→馬口山古墳→フサギ塚古墳→矢ハギ塚古墳(平塚古墳・マトバ古墳)→小岳寺塚古墳→中山大塚古墳→下池山古墳→燈籠山古墳→火矢塚古墳→西殿塚古墳・東殿塚古墳→空路宮山古墳→西山塚古墳→波多子塚古墳(クラ塚古墳)→ヒエ塚古墳・ノムギ古墳(成願寺遺跡)→長柄駅

 

 奈良盆地の東南部、天理市から桜井市にかけて、古墳時代前期の大型前方後円墳が集中しています。大きくは、西殿塚古墳を中核とする大和(萱生)古墳群、行燈山古墳・渋谷向山古墳を中核とする柳本古墳群、箸墓古墳を中核とする纒向(箸墓)古墳群に分けられます。近年は、これらの古墳群を総称し、オオヤマト古墳群(『おおやまと』古墳群)と呼ぶことも多くなりました。今回は、その北端部の天理市萱生町・成願寺町・中山町・岸田町・兵庫町・新泉町あたりに所在する大和(萱生)古墳群の各古墳を具に見て回ります。

 
長柄駅
集合 JR長柄駅
 
星塚古墳
 大和(おおやまと)神社境内にある墳丘長56mの前方後方墳と考えられているが、発掘調査が実施されていないため、詳細はわからない。
 
馬口山古墳
 大和(おおやまと)神社一の鳥居北側にある墳丘長110mの前方後円墳。
都月型埴輪が採集されたことがあり、古墳時代前期初に築造された可能性がある。

 
フサギ塚古墳
 上つ道沿い東側にある古墳。
 墳丘長110mの前方後方墳で、前方部墳丘の一部が調査されている。

 
矢ハギ塚古墳
 フサギ塚古墳の南側、上つ道西側にある墳丘長102mの前方後円墳であると考えられる。天理市教育委員会が周辺部で発掘調査を実施しています。また、「人造石」・「管玉」が出土したと伝えられている。
 
平塚古墳
直径約54mの円墳と考えられる。
(矢矧塚より遠望)
 
マトバ古墳
直径50mの円墳と考えられる。
(フサギ古墳より遠望)
 
小岳寺塚古墳

 墳丘長50mの前方後円墳と考えられる。
埋葬施設が、竪穴式石室である可能性があり、古墳時代前期に築造されたものと考えられている。
 
大和神社御旅所
中山大塚前方部南西端にある大和神社御旅所で昼食。念仏寺境内もお借りする。
 
念仏寺
 
中山大塚古墳
  墳丘130mの前方後円墳。1985・90~94年の6次に亘って、埋葬施設・墳丘・周辺部の発掘調査が実施され、古墳の全容がほぼ明らかになった。埋葬施設は、後円部の竪穴式石室で、盗掘がはげしかったためか、副葬品としては鏡片や鉄製品が出土するにとどまった。埋葬施設の構造や構築方法が明らかになったほか、埋葬施設上面や墳丘上に宮山型特殊器台・都月型埴輪・普通円筒埴輪と本古墳特有の器台が樹立されていたと考えられる。墳丘には大量の石材を用いた葺石が厚く施されている。墳丘北部には張り出し部、西側くびれ部には三角形張り出し部があり、この両者をつなぐ「周濠状」区画施設が確認されている。
常設展示室の模型を確認してください。
古墳時代前期初頭の築造と考えられる。

後円部埋葬部は紅カナメで形作られている。
 
下池山古墳

 墳丘長120mの前方後方墳である。1995~97年に埋葬施設・墳丘の発掘調査が実施された。後方部の竪穴式石室内で、現在常設展示中の大型の木棺が検出されたほか、碧玉製石釧・翡翠製勾玉・碧玉製管玉・ガラス製小玉・貝製品・鉄刀・鉄ヤリ・鉄ヤスなどの副葬品が出土した。また竪穴式石室の西に小石室があり、大型の製内行花文鏡(県指定文化財=展示中)が出土した。墳丘の発掘では、葺石は検出されたが、埴輪の出土はなかった。古墳時代前期後葉の築造と考えられる。
下池山古墳から金剛・葛城山と耳成・畝傍山
下池山古墳から二上山
 
燈籠山古墳

 墳丘長110mの前方後円墳である。発掘調査はおこなわれていませんが、藤田美術館に所蔵されている埴質枕と畝傍高校に所蔵されている埴質棺は本古墳と関連するものであると考えられてる。石釧・「勾玉」・「管玉」が出土したと伝えられるほか、円筒埴輪片が採集されており、古墳時代前期後葉の築造と考られる。
 
西殿塚古墳
 墳丘長230mの前方後円墳である。周辺の調査で円筒埴輪が出土しているほか、墳丘上からは、宮山型特殊器台が採集されている。赤色立体地図が作成されたが、後円部・前方部の方形段や墳丘段築などが鮮明に描かれている。古墳時代前期前葉の築造。

下池山古墳から望む西殿塚古墳
遥拝所へ向かう
 
東殿塚古墳
墳丘長175mの前方後円墳。1997年に天理市が調査をおこなって、円筒埴輪・朝顔形埴輪・鰭付円筒埴輪・楕円形埴輪が集中して樹立されており、そこに古式土師器が供献されていた。「金環」・「管玉」・「人造石」が出土したと伝えられている。古墳時代前期中葉の築造と考えられます。

 
 
西山塚古墳

 墳丘長114mの前方後円墳です。大和(萱生)古墳群のなかで、唯一、後円部を南に向けている。「勾玉」・「管玉」・「土器」・「人造石」などが出土したと伝えられる。採集された円筒埴輪や周辺の状況から古墳時代後期初頭に築造されたと考えられる。
 
空路宮山古墳(くろくやま)
 墳丘長50mほどの前方後円墳と考えられる。立地や伝承などから、埋葬施設は横穴式石室で、古墳時代後期の築造である可能性が考えられる。
 
波多子塚古墳

 墳丘長144mの前方後方墳。1997年に天理市が発掘調査をおこない、葺石と円筒埴輪を検出した。また、地中レーダーでおおよその墳形が確認された。古墳時代前期中葉の築造。
 
ヒエ塚古墳

  墳丘長130mの前方後円墳。外堤部で古式土師器を含む溝が検出されたほか、先頃天理市によって南側の周濠部での発掘調査がおこなわれ、葺石が検出されている。「勾玉」・「管玉」・「金環」・「土器」が出土したと伝えられている。古墳時代前期前葉の築造と考えられる。
 
ノムギ古墳

 墳丘長63mの前方後方墳。周濠の発掘調査が実施され、墳丘北東部で鰭付埴輪、墳丘東側で多量の古式土師器が出土した。また、近年墳丘各所の調査が天理市によって実施され、葺石が流出している状況が確認できたが、埴輪や埋葬主体は確認できなかった。古式土師器から、古墳時代前期前葉の築造と考えられる。

 
マバカ古墳

 墳丘長83mの前方後円墳。墳丘西側で周濠状区画が検出され、古式土師器が出土した。墳形などから古墳時代前期初頭の築造と考えられる。

墳丘を道路が分断。
 
撮影協力 坂部征彦